香港の歴史を通してビクトリアハーバーの両側にビル群ができて特異なスカイラインへと成長し、そこに街の進化が刻まれてきました。日光にきらきら反射するタワーが、まるで不死鳥のように植民地時代の建築の記憶の中からそびえ立つ間でも、変わらないものが一つあります。それは120年以上にわたって九龍半島の南端と香港島との間を結ぶ船、スターフェリーです。
港を横断するフェリーは、1880年代、起業家のパーシー教徒、ドラブジー・ナオロジー・ミタイワラ(Dorabjee Naorojee Mithaiwala)によって運航され、蒸気船モーニングスター号が就航しました。その後1898年に、イギリス・アルメニア人の実業家サー・キャッチック・ポール・チャター(Sir Catchick Paul Chater )が4隻の船団を購入したことで、スター・フェリー・カンパニーが誕生しました。
グリーンとアイボリーの色遣いで船頭と船尾が同じ形の船9隻が、今もなお中環、湾仔、尖沙咀を結んでいます。今の船のスタイルで最初に就航したのは1950年代であり、そのデザインはナオロジーのモーニングスター号とはやや異なっていましたが、あっという間に香港のインフラだけでなく街の風景に溶け込みました。今日では、香港の住民や来訪者に交通手段を提供するだけでなく、香港の創造性のインスピレーションの源にもなっています。
香港のビジュアルカルチャーを牽引するライフスタイルとファッションのお店、グッド・オブ・デザイヤー(Goods of Desire、G.O.D.)の共同創設者、ダグラス・ヤング氏は「スターフェリーはユニークで特別なものです」と言ってます。デザインをいつまでも変えないことがそれを特別なものにしている、と彼は信じています。「香港のものが、これほど長い間変らないことはまれです。」
香港を拠点とするデザイン・スタジオ「サブスタンス」のクリエイティブ・ディレクターであるマックス・ドートレスメ(Max Dautresme)は、湾仔のホテルThe Flemingの再設計にあたって自分のビジョンを引き出すためにこの船に乗り、スターフェリーへの素晴らしさを改めて実感しました。「私たちは、これこそが、我々がホテルに求めていた価値を体現する象徴だと気付きました。それは文化・伝統、社会、そして効率を体現するものなのです」とドートレスメ氏は言ってます。彼らにとって、この船は美と学びを与えてくれる接点でした。スターフェリーのエッセンスは、The Flemingの精神とスタイルに織り込まれています。
両方のデザイナーが、この船の椅子を特に特別なものとしていて、特にヤング氏によれば、アッパーデッキは、印象的な星のシンボルで装飾されているとのことです。「向きを変えることができるスイングバックは素晴らしいとしか言いようがありません」とドートレスメ氏は言い、対称性を成すこの船が前に進むか後ろに進むかに応じて、椅子の向きを変えることができる設計概念のシンプルさを高く評価しています。「すべてが非常に機能的ですが、その実用性は象徴的と言えるほどです」と彼は付け加えています。
素材も時代を超えています。真鍮、チーク材、ワックス、キャンバスというディテールはすべて、年ごとに古くなり、徐々に酸化・風化していきます。水など自然に晒されているにもかかわらず、それらがフェリーの永久的な遺産に威厳を与え、街のクラシックなシンボルに変身させています。
一方、ヤング氏にとって、旅そのものを思い出深いものになっているのは、船だけでなく、船で働く人々です。「昔ながらの船員たちも魅力的です。私は船員たちのユニフォームが気にっています」と彼は言ってます。「私はディーゼルの匂いが好きですし、できるだけ海の近くにいたいので、スターフェリーに乗るときは好んで下のデッキにいます。」
ヤング氏と同じく、ほとんどの香港人はフェリーの下甲板を好み、上甲板は少しでも港の良い景色を眺めようと見晴らしスポットを競う観光客に譲っています。その中には、自分で思っていたよりも長い間、港間を行き来しているという通勤客のフランチェスカ・チャンがいます。彼女は、MTRよりもスカイラインの中に身をゆだねて港を渡ることを好みます。「私にとって、安くて便利で効率的な手段です」と彼女は言ってます。「住まいが郊外の島にあり、職場が尖沙咀なので、スターフェリーに乗るのは理にかなっているんです。そして、毎朝毎晩、この光景を見ていると、故郷と呼ぶこの街とのつながりを感じることができます。天気がどうであれ、自分の居場所を確認できます。」
当然のことながら、この船の運航は観光アトラクションとしてだけではなく、ビクトリア・ハーバーを行き来する人々のためにできたものです。乗客が通勤客なのか、香港の壮大な景色を楽しもうという観光客なのかに関係なく、少なくともあと100年は運航し続けるという会社の義務感から、今後もビクトリア・ハーバーの水上からの素晴らしい見晴しを提供するでしょう。
「スターフェリーに乗り飽きるということはありません。香港が初めてというお客さまを連れて行くところでもあります」とドートレスメ氏は話しています。「素晴らしい唯一無二の景色を眺めることができ、港のドラマを体験できます。午後8時の「シンフォニー・オブ・ライツ」を見るなら、舷後部に場所をとってください。ライトの点灯とともに、スカイラインが途切れることなく一望できます。皆さん魅了されます。そういったものは、ここを除いて他にはありません。ここは、海に非常に近い環境でそのような濃密さとアーバニズムを備えた唯一の港の一つです」と彼は付け加えました。「スターフェリーでは、それをめいっぱい感じることができます。」
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